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建築業界豆知識~文学作品に描かれた建築から、暮らしの原風景をたどる~第1回 夏目漱石『三四郎』に見る「下宿」という住まい

黒宮建設です

小説を読んでいて、物語以上に心に残る「家」や「建物」に出会うことがあります。
今回ご紹介したいのは、夏目漱石の『三四郎』に描かれる下宿という住まいです。

主人公の三四郎が暮らす下宿は、決して立派な建物ではありません。
けれど、廊下の向こうに人の気配があり、障子越しに生活音が伝わり、
一つ屋根の下でそれぞれが静かに暮らしている様子が丁寧に描かれています。

今の住宅は、性能も高く、快適で、プライバシーも守られています。
その一方で、
「隣に誰が住んでいるのか分からない」
「家の中で人の気配を感じることが少なくなった」
そんな声を耳にすることも増えました。

『三四郎』の下宿を読んでいると、
住まいは人を守る箱であると同時に、人と人をつなぐ場所でもある
ということに気づかされます。

廊下や共有空間、ほどよい距離感。
すべてが計算されているわけではないのに、
自然と生まれる安心感や、孤独になりすぎない暮らし。

地域の工務店として家づくりに携わる中で、
私たちもよく「ちょうどいい距離感」の大切さを感じます。
家族がそれぞれの時間を持ちながら、
どこかでつながっていられる間取りや空間づくり。

文学に描かれた下宿は、
最新の設備や豪華な仕様では測れない、
住まいの本質をそっと教えてくれるように思います。

家は、完成した瞬間がゴールではありません。
そこで暮らす人の時間が積み重なり、
少しずつ思い出が増えていく場所です。

この町で、これからも
「帰ってくると、ほっとする」
そんな住まいづくりを、私たちは大切にしていきたいと考えています。

文学の中の下宿が、
今の私たちの暮らしにも、
小さなヒントを残してくれているように感じます。