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建築業界豆知識~文学作品に描かれた建築から、暮らしの原風景をたどる~第5回 向田邦子の作品に描かれる、昭和の台所と居間

黒宮建設です

向田邦子の作品には、
大きな事件や特別な建物はあまり登場しません。
けれど、読後に強く心に残るのは、
台所や居間といった、ごく身近な暮らしの空間です。

向田邦子が描く家には、
鍋の音、湯気、家族の声、
そして少しの気まずさや、照れくささが漂っています。
そこにあるのは、完璧ではないけれど、
確かに「生活が営まれている家」です。

昭和の家の台所は、
決して広くはありません。
けれど、家族の動線が自然と重なり、
会話が生まれ、
時には衝突も起こる場所でした。

居間もまた、
家族が集まり、
それぞれが違うことをしながら、
同じ空間を共有する場所。

テレビの音、新聞をめくる音、
子どもの宿題、
台所から漂ってくる夕飯の匂い。

向田邦子の作品を読んでいると、
家の中心は、豪華なリビングではなく、
人の気配が集まる場所なのだ
と感じさせられます。

現代の住宅では、
LDKが広く、機能的につくられることが多くなりました。
それはとても便利で、快適です。
一方で、
「家族が同じ空間にいるはずなのに、どこか離れている」
そんな声を聞くこともあります。

私たち地域の工務店が、
リフォームや間取りのご相談を受ける際に大切にしているのは、
広さや設備以上に、
どこで人が交わるのかという視点です。

向田邦子の描く台所と居間は、
決して理想的な空間ではありません。
けれど、そこには、
暮らしの温度が確かにありました。

家は、きれいに整える場所であると同時に、
少し雑然としていてもいい場所。
生活の跡が残ることで、
安心できる空間になることもあります。

文学が教えてくれるのは、
住まいは「見せるもの」ではなく、
生きるための場所だということ。

この町で暮らす皆さまにとって、
台所や居間が、
今日も変わらず、
家族の時間を受け止める場所でありますように。

黒宮建設はこれからも、
暮らしの真ん中にある空間を大切にした
住まいづくりを続けていきたいと思います。