建設業界豆知識∼ジブリ映画から学ぶ~建築と時代から見るジブリの世界
黒宮建設です
~『天空の城ラピュタ』と『風立ちぬ』に学ぶ、設計思想と住まいのヒント~
ジブリ作品には、空想と現実が絶妙に交わる「建築美」が多く登場します。
今回取り上げる2作品には、それぞれ異なる“設計の哲学”が込められており、空間の魅力や時代性が丁寧に描かれています。
工務店としての目線から、「もし現代の家づくりに取り入れるなら?」という視点も交えて、読み解いていきましょう。
天空の城ラピュタ:重力と自然が調和する空中都市設計
天空に浮かぶ伝説の島「ラピュタ」は、文明の極みと崩壊を象徴する建築物。
空に浮かぶ構造体でありながら、自然との共存を感じさせる設計が魅力です。
◾設計的な注目ポイント
中央の巨大な核=エネルギー中枢の設計思想
中央の巨木とその根に包まれた核は、まさに“自然と人工の融合”。構造の中心に自然を据える思想は、現代建築にも通じるサステナブルな価値観と言えます。
階層構造と用途分離
空中都市ラピュタは、明確なゾーニング(居住区、研究区、軍事区、自然区)で構成されており、大規模施設における合理的な空間配置の一例と見ることができます。
素材感と経年美
石造りの壁、苔むした床、崩れかけたアーチ。全体として「朽ちていく美しさ」が描かれており、これは現代においても“エイジングを楽しむ住まい”の参考になります。
▶ 現代住宅で活かすなら…
自然との共存・素材の経年変化・機能分離といった思想は、パッシブ設計や平屋分棟型住宅、自然素材を活かした住まいづくりに応用可能です。
風立ちぬ:昭和初期の日本に見る生活の変化と建築美
堀越二郎の人生を描く『風立ちぬ』では、大正~昭和初期にかけての住宅や建築様式が数多く描かれています。
飛行機設計という夢と、震災・戦争という現実の中に息づく「暮らしと建築の記録」が随所に見られます。
◾時代背景を反映した設計ディテール
洋風化する日本家屋
主人公の自宅や病院、ホテルには、モルタル外壁・アーチ窓・縁なしのフローリングなど、和洋折衷の要素が多く使われています。これは、関東大震災後の“耐震・耐火”を意識した住まいへの移行を象徴しています。
通風・採光・自然との距離感
菜穂子が療養する山荘では、深い軒、木製サッシ、南向きのテラスなど、気候風土に合わせた設計が丁寧に描かれています。これらは現代のパッシブデザインにも通じる工夫です。
家具と住まいの調和
映画内の住空間には、“置き家具”が多く描かれています。造作に頼らない家具配置が住まいの可変性を高め、暮らしの変化に柔軟に対応している様子が見て取れます。
▶ 現代住宅で活かすなら…
古き良き“日本のモダン住宅”の意匠を取り入れつつ、気候に合った設計思想を活かすことで、機能性と情緒を兼ね備えた住まいづくりが可能になります。
空想と現実の間にある、建築の真髄
『ラピュタ』は理想化された空中建築の姿を、『風立ちぬ』は歴史に裏打ちされた実在の住まいを、それぞれ象徴的に描いています。この2つに共通するのは、「人が住まうための必然性」と「時代と自然との対話」です。
今の住宅設計でも、環境に配慮した家づくり、災害への備え、そして家族構成や時代に合わせた柔軟性は、ますます重要視されています。
ジブリ作品に登場する建築や間取りを見つめ直すことで、私たち工務店も“物語のある住まい”を提案していきたいと改めて感じます。
次回は、『崖の上のポニョ』や『借りぐらしのアリエッティ』など、「環境やスケールの違い」がテーマとなる住まいを掘り下げてご紹介します。
どうぞお楽しみに!
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